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相続・遺言コラム
法定相続人とは?知っておきたい順位・割合についてわかりやすく解説
法定相続人とは、遺産を相続する権利を持つ人のことです。配偶者や子ども、直系尊属(両親や祖父母など)や兄弟姉妹が対象となります。相続人に該当する人は法律で決められているため、万が一他人に財産を相続したいと思っても、自由に分配できるわけではありません。法定相続人の順位や相続できる範囲は、民法によって定められています。相続には複雑な手続きが伴うため、専門的な知識が必要です。
本記事では法定相続人の順位や割合、遺産の相続方法などを解説しています。また、具体的なケースをふまえたシミュレーションも紹介しています。
これから相続に直面する可能性がある方、法定相続人の知識を得たいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
法定相続人とは遺産を相続する法的権利を持つ人のこと
法定相続人とは、被相続人(亡くなった人)の遺産を相続する法的な権利を持つ人のことです。
被相続人から見て、以下の人々が該当します。
- 配偶者
- 子ども
- 親
- 祖父母
- 孫
この範囲や順位は民法で明確に定められています。被相続人の配偶者や血縁関係にある人々が対象となります。
相続の順位とは
相続の順位とは、法定相続人が遺産を受け取る順序のことを指します。法で以下のように定められています。
配偶者 | 最優先で相続人 |
子ども/孫 | 第1順位 |
親/祖父母 | 第2順位 |
兄弟姉妹/甥姪 | 第3順位 |
最優先で法定相続人となるのは、配偶者です。この場合、「配偶者」とは、婚姻関係を結んでいる間柄のことを言います。すなわち、法律上の夫婦であることが重要です。
法定相続人の第1順位には、「直系卑属」である、子どもと孫が該当します。直径卑属とは、相続人の後に続く血縁者のことです。第2順位は親と祖父母で、第3順位は兄弟姉妹と甥姪です。
なお、子どもがいるケースだと、孫は法定相続人になれません。同様に親がいる場合の祖父母や、兄弟姉妹がいる場合の甥姪も該当しません。このように、法定相続人の各順位は、法的に定められています。また、順位ごとに相続の割合が異なりますので、以下で解説していきます。
相続の割合とは
ここでは、具体的な割合と配分方法を詳しく解説します。法定相続分と遺留分の観点から、見てみましょう。
法定相続分
法定相続分とは、法律で定められた相続人が受け取れる遺産の割合です。具体例を見てみましょう。
相続人の構成 | 法定相続分 |
配偶者のみ | 配偶者が全部 |
配偶者と子ども | 配偶者が1/2、子どもが1/2 |
配偶者と親 | 配偶者が2/3、親が1/3 |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4 |
子どものみ | 子どもが全部 |
このように、相続する人や人数によって、相続の割合は変動します。なお、同じ相続人が複数いる場合は、法定相続分を頭割りします。また遺言によって、分配方法が指定されていれば、法定相続分に従う必要はありません。
遺留分
遺留分とは、法定相続人が最低限受け取ることが保証されている遺産の割合です。遺言によって、法定相続人以外への相続は可能ですが、100%相続できるわけではありません。たとえ遺言で第三者に相続を指定していた場合でも、一定の遺産は法定相続人が受け取る権利が発生します。
相対的遺留分(法定相続人全員分の遺留分)は全体の1/2です。それぞれの法定相続人が相続できる遺留分は、相対的遺留分を法定相続分で定められた割合となります。具体的なケースで、相続できる割合を見てみましょう。
ケース | 遺留分 |
配偶者のみ | 1/2 |
配偶者と子ども2人の場合 | 配偶者は1/4、子どもは1人あたり1/8 |
子どものみ | 1/2 |
なお、兄弟姉妹や甥姪には、遺留分が認められません。
法定相続人とはどこまでを指す?
前述のとおり、法定相続人とは、故人の遺産を法的に受け取る権利を持つ人々のことです。法的な配偶者や血縁関係にある場合はわかりやすいのですが、内縁の妻や養子においてはどのように財産が配分されるのでしょうか。ここでは、法定相続人の範囲について紹介します。
内縁の妻は法定相続人になれない
内縁の妻は、正式に婚姻関係が成立していないため、法定相続人にはなれません。
婚姻届けを提出していない内縁関係の配偶者には、相続する権利が認められていないのです。そのため、被相続人が内縁の妻に遺産を譲りたい場合には、遺言書の作成が必要です。
ちなみに、内縁の妻とのあいだに子どもがいる場合、その子どもと被相続人の間に法的な親子関係が認められていれば、その子どもは法定相続人になります。ただし、認知等の手続きがなされていなければ、その限りではありません。
養子は法定相続人になれる
養子は法的に認められた「子ども」です。そのため、養子も実子と同じように、法定相続人として遺産を相続する権利があります。養子縁組が成立すると、養子は実子と同じように相続権を持ちます。よって、養親の遺産を「子ども」と同じ割合で受け取れるというわけです。
さらに、養子には実親の遺産を相続する権利もあります。ただし、特別養子縁組の場合は、養親の遺産のみの相続となります。
遺産の相続方法は3種類
遺産の相続方法は「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3種類があります。遺産はプラスの財産だけでなく、ローンや借金などの負債も含まれます。相続人の状況や遺産の内容によって適切な方法が異なるため、慎重に選択しなければなりません。
それぞれの相続方法について詳しく説明します。
単純承認
単純承認とは、被相続人の遺産と負債を、無条件ですべて引き継ぐことです。相続の開始から3か月以内に相続方法の選択の手続きを取らなければ、自動的に単純承認となります。
遺産がプラスであれば特に問題ありませんが、負債が多い場合でも引き継ぐ義務が発生します。相続人は被相続人のすべての財産を無条件で承認するため、後から負債が発覚しても、相続放棄できません。
単純承認を選ぶ際には、遺産と負債の全貌をしっかりと把握することが重要です。一度、単純承認に決定したら限定承認・相続放棄は選択できません。
限定承認
限定承認は、プラスの遺産の範囲内で、負債を引き継ぐ相続方法です。
例えばプラスの資産が1,000万円あり、ローンの残りが2,000万円あった場合で見てみましょう。一見マイナス1,000万円となりそうですが、相続の方法で限定証人を選択すれば、弁済の責任を負う必要はありません。よって、相続人は遺産を超える負債について引き受けなくてもよくなるため、リスクを抑えた相続が可能です。この方法は、遺産と負債の両方が存在する場合に、有効です。ただし、相続人全員が、限定承認しなければなりません。
限定証人を選ぶ場合は、自分が相続人だと知った日から3か月以内に申請する必要があります。そのあいだに手続きしないと、自動的に「単純承認」となるため、注意しましょう。
相続放棄
相続放棄とは、プラスの財産も負債も引き継がず、法的に相続権を放棄することです。すべての相続を拒否するため、「プラスの財産<負債」のときに選択されることが多くあります。中には、相続トラブルを避けるために相続放棄する人もいます。
限定証人同様、自分が相続人だと知った日から3か月以内に申請しなければなりません。費用の計算や書類の取り寄せなどに時間がかかることが予想されるため、早めに手配しておきましょう。
相続放棄を選択する場合、家庭裁判所に申述書を提出する必要があります。相続放棄すれば負債から解放される一方で、遺産も受け取れないことを覚えておきましょう。
相続割合をシミュレーション
法定相続分は、相続人の範囲と人数で決定します。相続の際には、遺産をどのように分配するかが重要です。ここでは、具体的なケースをシミュレーションしてみましょう。総額5,000万円を相続する例を挙げて、ケースごとの相続割合を紹介します。
相続人が配偶者と子ども1人の場合
相続人が配偶者と子ども一人の法定相続分は、以下の割合で相続されます。
- 配偶者の相続分:5000万円 × 1/2 = 2500万円
- 子どもの相続分:5000万円 × 1/2 = 2500万円
遺留分については、以下のとおりです。
- 配偶者の遺留分:2500万円 × 1/2 = 1250万円
- 子どもの遺留分:2500万円 × 1/2 = 1250万円
相続人が子ども2人、兄弟姉妹1人の場合
相続人が子ども2人と兄弟姉妹が1人の法定相続分は、以下の割合で相続されます。
- 子ども1人あたりの相続分:5000万円 ÷ 2 = 2500万円
- 兄弟姉妹の相続分:0円
遺留分については、以下のとおりです。
- 子ども1人あたりの遺留分:2500万円 × 1/2 = 1250万円
- 兄弟姉妹の遺留分:0円
この場合、兄弟姉妹には法定相続分がありません。ただし、遺言で兄弟姉妹に財産を分けることを指定されている場合は、その内容に従います。
相続人が親1人、兄弟姉妹2人の場合
相続人が子ども2人と兄弟姉妹が1人の法定相続分は、以下の割合で相続されます。
- 親の相続分:5000万円
- 兄弟姉妹:0円
遺留分については、以下のとおりです。
- 親の遺留分:5000万円 × 1/2 = 2500万円
- 兄弟姉妹の遺留分:0円
このケースも、兄弟姉妹は相続できません。遺言で兄弟姉妹に財産を分けることが指定されている場合は、その内容に従います。
相続人と間違えやすい用語
相続に関連する用語には、混同しやすいものがいくつかあります。代表的なものが以下の2つです。
- 成年後見人
- 代襲相続人
用語を正しく理解することで、相続手続きを円滑に進められます。それぞれの意味と役割を詳しく見ていきましょう。
成年後見人とは
成年後見人とは、判断能力が不十分な人(高齢者や障がい者など)のために、法律面や生活面において支援する人のことです。
具体的には、財産管理や、福祉サービスや医療を受けるための手続きを代行します。成年後見人は、被後見人(支援される人)の意志を尊重しながら、生活を安定させるサポートをします。
万が一、成年後見人が財産を不適切に扱った場合、解任されたり責任を問われる場合があります。ただし、成年後見人は相続人ではなく、相続に関する権利を持ちません。そのため、相続手続きには直接関与しません。
相続において成年後見人が必要となるケースは、遺産分割協議が行われた場合です。遺書がなく、相続人が判断能力を欠く場合は、成年後見人を立てる必要があります。
代襲相続人とは
代襲相続人とは、本来の相続人が相続開始前に亡くなった場合、代わりに相続する人のことです。
代襲相続人の制度により、遺産は故人の意志に沿って次世代に継承されます。例えば、子どもが親よりも先に死亡した場合は、孫が代襲相続人になります。子どもと孫が親よりも先に死亡した場合は、ひ孫が再代襲相続人になるというわけです。
相続分の割合は、そのまま引き継がれます。代襲相続人の人数で相続を割るため、相続人が増えるほど、相続される財産の割合は減ります。
法定相続人についてのよくある質問
法定相続人に関する疑問や不安は、多くの人に共通しています。ここでは、特に多く寄せられる3つの質問と回答を紹介します。
法定相続人がいない場合の相続はどうなる?
法定相続人がいない場合、とりまく状況によって、遺産の行方は変わります。具体的には、以下の方法で決定されます。
状況 | 遺産の行方 |
遺言書で誰かに遺贈する旨が書かれている場合 | 遺言書に書かれた人に帰属する。 |
被相続人となんらかの縁があり、家庭裁判所から認定された「特別縁故者」がいる場合 | 遺産の一部またはすべてが特別縁故者に帰属する。一部の場合の残りは国に帰属する。 |
遺贈や特別縁故者(被相続人と縁があり、家庭裁判所から認定された人)もいない場合 | 遺産は国庫に帰属する。 |
このように、法定相続人がいない場合は、遺言状に従って分配されるか、国に帰属されます。
法定相続人は放棄できる?
法定相続人は相続の放棄が可能です。
相続放棄することで、その相続人は最初から相続人でなかったものとみなされます。相続放棄は家庭裁判所に対して、相続の開始を知った日から3か月以内に申述する必要があります。
放棄する場合、借金などの負債も含めた一切の遺産も相続しないことになります。そのため、相続放棄する際は、遺産の全体像をしっかりと把握することが大切です。
相続の相談はどこへいけばよい?
相続に関する相談は、専門家に依頼するのが賢明です。
行政書士や弁護士、司法書士や税理士などが相続の専門知識を持ち、具体的なアドバイスや手続きをサポートしてくれます。特に複雑な相続問題や争いがある場合は、弁護士に相談すると良いでしょう。
また、地方自治体や公的機関が提供する無料相談窓口も利用可能です。初めての相続で不安な場合は、まず専門家の意見を聞いてみましょう。
相続でお困りなら「相続の窓口」へご相談ください
法定相続人は民法で決められた、財産を相続できる人のことです。配偶者は常に相続人となり、第1順位が子どもと孫、第2順位が親と祖父母、第3順位が兄弟姉妹と甥姪となります。また、たとえ遺言で親族以外の人へ財産を残すと決めても、全額引き渡せるわけではありません。相続の範囲や順位は決まっているため、法に則って対応する必要があります。
このように、相続はややこしく複雑な手続きが必要となるため、困った場合は専門家への相談がおすすめです。「相続の窓口」では、経験豊富な行政書士が、相続のお悩みに寄り添いながらサポートいたします。相続でお悩みがある方は、お気軽にご相談ください。
相続の相談窓口を8か所紹介!選び方のポイントや必要な準備も解説
相続問題が自分の身に降りかかった場合、専門家へ相談することが解決への近道です。相続にはさまざまなルールが定められており、個々で対処するのは難しいケースもあります。相続について相談できる窓口は複数ありますが、専門家にはそれぞれ得意分野があります。ご自身の悩みにあわせて、適切な相談窓口を選ぶことが重要です。
本記事では、相続について相談できる窓口や相談先の選び方、専門家へ依頼した際の費用目安について解説します。相続問題でお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
相続相談はどこに行けばいい?相談窓口一覧
相続について相談できる場所は、大きくわけて8か所あります。ここでは各相談先の対応可能業務や、手続きを依頼した場合の費用目安について紹介しています。それぞれの特徴をふまえて、適切な相談先を選びましょう。
相談先 | 主な特徴 |
行政書士 | 行政手続きを幅広く扱う |
司法書士 | 不動産の名義変更が可能 |
弁護士 | 相続人同士のトラブルに対応 |
税理士 | 相続税に関する相談が可能 |
法テラス | 経済的に余裕がない人も相談できる |
銀行 | 金融資産の手続き・運用相談 |
税務署 | 相続税の申告書の書き方、納税手続きの相談が可能 |
市役所や区役所の無料相談 | 相続全般の相談が気軽にできる(依頼はできない) |
なお、紹介している費用はあくまでも目安であり、それぞれの事務所や状況によって金額は異なります。詳細は依頼先にご確認ください。
1.行政書士
行政書士は、官公署に提出する申請書類の作成・提出手続き代理などを行う法律の専門家です。
行政書士の対応可能業務
相続において、行政書士は主に以下のような業務が行えます。
- 遺言書の作成アドバイス
- 戸籍謄本等の収集
- 官公庁への書類提出
- 遺言内容の執行・遺言執行者の就任
- 相続人調査
- 相続財産の調査
- 相続関係図の作成
- 遺産目録作成
- 遺言執行者への就任
- 遺産分割協議書の作成
- 銀行等預貯金の相続手続き
- 相続した自動車の名義変更
- 相続した株式の名義変更
- 相続関係図の作成
このように、行政書士は行政全般にわたる手続き代理を、総合的に扱います。相続人同士のトラブルや、不動産の相続がない場合の相談先として適しています。
行政書士の費用目安
行政書士に相続手続きを依頼した際の、費用目安は以下のとおりです。
項目 | 費用 |
遺産分割協議書作成 | 3万円〜 |
遺言書作成 | 5万円〜 |
相続人調査 | 2万5,000円〜 |
相続関係説明図作成 | 2万円〜 |
財産目録作成 | 2万円〜 |
預貯金・有価証券の解約 | 2万円〜 |
自動車の名義変更 | 2万円〜 |
なお、一つの業務だけでなく、複数の業務をパッケージとして費用を提示している事務所も多くあります。
2.司法書士
司法書士は、登記申請や供託手続きなどを中心とした、法律に関する幅広い業務を請け負う専門家です。「街の身近な法律家」として、さまざまな問題解決に携わっています。
司法書士の対応可能業務
相続において、司法書士が行える主な業務は、以下のとおりです。
- 遺言書検認の申立て
- 不動産の相続登記
- 相続人調査
- 相続財産の調査
- 遺言書の作成
- 遺言の執行
- 預貯金の解約
- 遺言書の検認申立書の作成
- 遺産分割協議書の作成
- 相続した株式の名義変更
- 相続放棄の申立て
司法書士の業務は主に書類作成が中心で、相続に不動産が含まれる場合の相談先として適しています。一方で、相続人同士でトラブルがある場合には、司法書士への相談は向いていません。
司法書士の費用目安
相続登記を司法書士に依頼した場合、次の3つの費用がかかります。
- 司法書士の報酬
- 登録免許税
- 書類取得にかかる手数料
個々の費用目安は以下のとおりです。
内容 | 費用 |
司法書士報酬 | 5万円〜 |
登録免許税 | 固定資産税評価額×0.4% |
書類取得費用 | 200〜750円程度 |
遺産分割協議書作成費 | 5万円〜 |
相続人調査 | 2万円〜 |
作業内容の範囲によって、トータル費用は大きく変わります。
3.弁護士
弁護士は士業の中でも、裁判や調停において依頼人の代理人となれる、唯一の業種です。
弁護士の対応可能業務
相続では、以下のような業務に対応できます。
- 遺産分割調停・遺産分割審判の代理
- 遺言書の作成
- 遺言書検認の申し立て
- 相続人調査
- 相続財産の調査
- 遺産分割協議書の作成
- 相続放棄の申し立て
- 預貯金の解約、払い戻し
- 有価証券などの名義変更
相続人同士での話し合いが円滑に進まない場合は、弁護士が調停や裁判での代理人となることで、解決につながるケースもあります。調停や裁判において、当事者を代理できるのは、弁護士のみの専門性と言えます。
弁護士の費用目安
弁護士の費用は「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」をもとに報酬基準を設定しているところが多いようです。
具体的な費用の内訳は、以下のとおりです。
遺言執行(基本) | 経済的な利益の額が300万円以下の場合 | 30万円 |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 2%+24万円 | |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 1%+54万円 | |
3億円を超える場合 | 0.5%+204万円 | |
遺言書作成 | 定型 | 10万円から20万円の範囲内の額 |
遺言書作成(非定型) | 経済的な利益の額が300万円以下の場合 | 20万円 |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 1%+17万円 | |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 0.3%+38万円 | |
3億円を超える場合 | 0.1%+98 万円 |
4.税理士
税理士とは税務に関する専門家です。相続においては主に納税や節税対策、税制改正に関するアドバイスが行えます。
税理士の対応可能業務
具体的には、以下の内容の相談が可能です。
- 相続税の節税対策
- 相続人調査・相続財産調査
- 預貯金の解約
- 準確定申告
- 遺産分割協議書作成(相続税の申告が必要な場合)
- 有価証券などの名義変更
- 相続税申告代行
- 税務調査への対応
相続税の計算に慣れない人が行うと、過払いが発生する可能性もありますが、税理士から的確な助言を受ければ、節税できることもあります。相続税のお悩みがある場合は、税理士への相談がおすすめです。
税理士の費用目安
税理士の費用は、依頼内容や状況によって大きく異なりますが、2002年まで適用されていた「旧税理士報酬規定」を参考にしている事務所も少なくありません。
相続税の税務代理報酬の目安は以下のとおりです。ここに基本報酬額10万円が加わります。
相続財産の金額の範囲 | 費用 |
5,000万円未満 | 20万円 |
7,000万円未満 | 35万円 |
1億円未満 | 60万円 |
3億円未満 | 85万円 |
なお、共同相続人が1人増すごとに、加算報酬(費用の10%)が加わります。また、事務が著しく複雑な場合は「費用+加算報酬」の最大100%が加算されることもあります。
参照:経理コンパス
5.法テラス
法テラスとは、法的なトラブルを解決するために、国が設立した総合相談窓口のことです。「誰に相談したら良いかわからない」「解決方法がわからない」といった悩みを抱える方に対し、適切な解決策を提案してくれる機関です。
「民事法律扶助」という制度を利用することで、経済的に余裕のない方が、弁護士や司法書士に無料で法律相談を受けられるようになります。さらに、弁護士・司法書士の費用の立替えを受けられる場合もあります。
ただし、無料相談や費用立替えを受けるためには、収入や資産額が一定の基準以下であるなど、所定の条件を満たす必要があります。具体的な要件については、法テラスのサイトをご覧ください。
6.銀行
銀行では、預貯金や借入金の残高確認、金融資産の名義変更など、相続に伴う実務的な手続きについて相談に応じてくれます。主な業務内容は以下のとおりです。
- 被相続人の金融資産の手続き
- 相続した遺産の運用相談
- 士業への橋渡し
- 相続に関するアドバイス
ただし、銀行では遺言書作成や遺産分割の調停など、法的な手続きは行えません。相談できる内容は限定的ですが、金融資産に関する的確なアドバイスを受けられます。
7.税務署
税務署では、相続税の申告方法や書類の作成方法、申告の必要性などの相談ができます。税務署に相談する方法は、電話と直接足を運ぶ2種類があります。税務署を訪問する場合は、予約をしておきましょう。
なお国税庁のホームページでは、相続税の申告要否判定や申告する際のチェックシートなどが用意されているので、事前に確認しておくと良いでしょう。
注意点としては、節税対策の相談は受けられないことです。特定の納税者にのみアドバイスしてしまうと、公平性が損なわれてしまうからです。法律から外れた助言はできませんが、相続税の一般的なしくみについての相談はできます。
8.市役所や区役所の無料相談
市役所や区役所の無料相談では、行政書士や弁護士などの、法律の専門家に相談できます。なかには、オンラインでの相談に対応している自治体もあります。
注意点としては、相談担当者に問題の解決の依頼や個別具体的な相談はできないことです。また、具体的な仕事を依頼することもできません。あらかじめ話したい内容をまとめておき、資料があれば持参するとスムーズな相談が可能です。
また、「おくやみ」窓口を開設している自治体も増えています。亡くなった方に関する手続きを、1つの窓口で行えるように設置されたものです。課をまたぐことなく、相談できる便利なしくみとなっています。
相続の相談先選びのポイント
相続の相談先を選ぶ際は、専門性や実績、評価や報酬などをふまえて、トータル的に検討する必要があります。相続にはさまざまな事情があるため、自分のケースに合った相談先を見つけることが大切です。ここでは選び方のポイントについて紹介します。
悩みの内容によって相談先を決める
相続の悩みは、百人百様です。各専門家にとって、得意とすることや、対応できる業務はそれぞれ異なります。そのため、抱えている悩みの内容にあわせて、相談先を決める必要があります。
例えば、相続人同士のトラブルについて知りたいのに、税理士へ相談しても必要な回答は得られません。争いが起きた際に法的な対応ができるのは、弁護士のみだからです。
このように、悩みの内容によって、相談先を使い分けることが重要です。いくつかの悩みがある場合は、一つの相談先にこだわらず、複数の専門家へ相談するのも良いでしょう。
相談したい内容の経験と実績があるかを確認する
相談したい内容について、十分な経験と実績があるかを確認しましょう。相続は個別のケースによって事情が大きく異なります。そのため、経験が浅い相談先に依頼すると、適切なアドバイスが受けられない可能性があり、大きな損失を被るリスクがあるのです。
経験や実績が豊富であれば、さまざまな事例に対処できる可能性が高くなります。ホームページで実績を公開している事務所もあるので、事前に確認しておくと良いでしょう。
相続に詳しい担当者を選ぶ
相続の相談をする際は、相続関係に詳しい担当者を選ぶことが重要です。相続の知識や経験が豊富な担当者は、状況に応じた的確なアドバイスができるからです。一般的な法律の専門家でも、分野が異なれば、適切な助言ができない可能性があります。そのため、相続に特化した、豊富な経験と実績を持つ担当者を選ぶ必要があるのです。
相続に詳しい担当者を見つけるには、ホームページに掲載された過去の実績や口コミを参考にするとよいでしょう。
相続相談に必要な準備
相続の相談をする際は、相続財産の情報と相談したい内容を、事前にまとめておく必要があります。準備不足の場合は、的確なアドバイスが得られない可能性があるからです。ここでは、相談する際に準備しておきたい内容を、詳しく紹介します。
相続財産の情報をそろえておく
相談する際には、相続財産の情報を事前にまとめておきましょう。用意しておきたい具体的な資料や書類は、以下のとおりです。
- 預貯金通帳の残高証明書
- 株式や投資信託等の有価証券
- 戸籍謄本
- 固定資産評価額がわかる証明書
- 住民票の除票
- 生命保険証・損害保険証
- 借入金の残高証明書
- 年金手帳
- その他相続財産に関する書類
手ぶらでも相談はできますが、効率よく話を進めるためにも、わかる範囲での情報をまとめておくのがおすすめです。もしも資料の準備が間に合わない場合は、相談先に状況を説明し、アドバイスを受けると良いでしょう。
相談内容をまとめておく
スムーズに相談を進めるためにも、話しておきたい内容をまとめておきましょう。事前に質問を整理しておくことで、確認もれや重要な内容の聞き逃しを防げます。また、相談相手の専門家も状況を正確に把握できるため、的確なアドバイスが可能です。あいまいな質問を投げかけても、必要な回答が得られません。
相続は金銭的・精神的にデリケートな問題を含んでいます。家族間での誤解やトラブルを防ぐためにも、事前の準備が不可欠です。しっかりと相談内容と情報をまとめておきましょう。
行政書士へ相続の相談をするなら相続の窓口へ!
相続に関する相談内容は、多岐にわたります。抱える悩みや予算にあわせて、適切な相談先を選びましょう。また、スムーズな相談をおこなうためには、事前にしっかりと準備することをおすすめします。
もし行政書士へ相談したいとお考えであれば、「相続の窓口」までお問い合わせください。ご相談だけなら無料ですので、何から手をつけたら良いかわからない人でも、気軽にご利用いただけます。また、他の士業との連携体制も整っておりますので、総合的なサポートが可能です。時間や手間がかかる相続の手続きをスムーズに済ませたい方は、ぜひご相談ください。
相続の手続きの流れを理解しよう|必要書類や手順をわかりやすく解説
ひと口に相続手続きと言っても、相続人がやらなければならないことはたくさんあります。中には期限が設定されているものもあり、書類の手配やその準備を計画的に行わなければなりません。しかし、相続手続きを何度も経験することはそうそうないでしょう。いざ相続がはじまったものの、何から手を付ければ良いかわからないという人もいると思います。
そこで本記事では、相続手続きの大まかな流れと、時期ごとに必要な手続きについて解説します。おおよその目処を立てて、必要書類の準備や手続きを滞りなく行いましょう。
相続手続きの流れと必要な届出・申請の一覧
遺産相続は、被相続人の死亡届を提出した時点から始まります。被相続人の年齢や属性によって実際に行う申請や手続き内容は多少異なるものの、大まかな流れとして次のとおりに手続きを行います。
手続き名 | |
相続発生から7~14日以内 | 金融機関への連絡 |
公共料金の手続き | |
年金の受給停止手続き | |
健康保険証の返却 | |
介護保険の資格喪失届の提出 | |
世帯主変更届の提出 | |
遺言書の確認および相続人、相続財産の確定 | |
相続発生から3~4ヶ月以内 | 相続放棄・限定承認・単純承認の選択 |
遺産分割協議 | |
遺産分割協議書の作成 | |
遺産分割協議に伴う各種手続き | |
準確定申告 | |
相続発生から10ヶ月以内 | 相続税申告書の作成と相続税の納付 |
相続発生から1~5年以内 | 相続登記 |
遺留分侵害請求 | |
葬祭費や埋葬料、高額医療費などの申請 | |
生命保険の死亡保険金の請求 | |
遺族年金や未支給年金の受給 |
全員が同じ手続きの流れで完了するわけではありませんが、相続の発生から10ヶ月間は何かしらの手続きに追われていると考えておきましょう。期限が設けられているものとそうでないものに分けることもできますが、基本的には全員が何かしらの手続きをする必要があると思っておいてください。
時期ごとに必要な相続の手続きと必要書類
ここからは、期限ごとに行う必要がある手続きの詳細について詳しく解説します。それぞれで必要な書類や提出先が異なるため、本記事を参考に準備をしておきましょう。
また、相続人によっては必要がない手続きも含まれています。詳細は各手続き内容の解説で詳しく解説しているため、そちらも参考にしてください。
相続発生から7~14日以内
相続発生から7~14日以内に行わなければならない手続きとして、以下の7つがあります。
- 金融機関への連絡
- 公共料金の手続き
- 年金の受給停止手続き
- 健康保険証の返却
- 介護保険の資格喪失届の提出
- 世帯主変更届の提出
- 遺言書の確認および相続人、相続財産の確定
いずれもどの相続手続きよりも緊急性の高いものです。この時期が最もやることが多いタイミングであり、葬儀と並行して行わなければならない場合もあるでしょう。
ポイントは、同じ窓口で書類の提出や手続きができる場合は一緒に実施してしまうことです。何度も繰り返し手続きに向かうよりも効率的に相続手続きを進められます。それぞれの詳細を見ていきましょう。
なお本記事では、すでに死亡届および火葬許可申請を提出しているものとして話を進めます。
金融機関への連絡
最優先で行うべきは、金融機関への連絡です。被相続人が亡くなった旨を金融機関に連絡しなければ、各種料金の引き落としや第三者の勝手な現預金の引き出しができてしまうためです。これらを防ぐためにも、被相続人の死後、速やかに金融機関へ連絡を入れてください。
連絡は窓口のほか、ホームページ上の受付フォームや専用のフリーダイヤルで受付されています。その際、被相続人名義の通帳やキャッシュカードとあわせて、定期的な引き落としなどの支払いをする被相続人以外の名義になっている金融機関の通帳・キャッシュカードも用意しておきましょう。
公共料金の手続き
被相続人名義の公共料金などの名義変更や解約手続きも同時進行で進めてください。金融機関に名義人が死亡した旨を伝えると口座が凍結され、入出金ができなくなります。そのため、名義変更をする必要がある場合は相続人、あるいは一時的に子どもや配偶者へ名義変更をする必要があります。
また、公共料金以外にも新聞代や電話加入権などの手続きも進めてください。同様の理由で引き落としができずにトラブルに発展する可能性が出てきます。金融機関への連絡と同時進行で、各種支払先に連絡しましょう。
年金の受給停止手続き
被相続人が年金受給者であった場合、受給していた年金の停止手続きを行わなければなりません。国民年金に加入していた場合は死後14日以内に、厚生年金の場合は死後10日以内に最寄りの年金事務所で手続きを行う必要があります。
この時、「受給権者死亡届(報告書)」の提出が必要ですが、書類は年金事務所や年金センターでもらえます。また、もし日本年金機構に被相続人のマイナンバー(個人番号)が登録されている場合は、この書類の提出は必要ありません。
もし受給停止手続きが遅れた場合、その期間に支払われた年金を返金する必要があります。非常に手間であるため、必ず期日内に手続きを終えるようにしてください。
健康保険証の返却
被相続人が国民健康保険に加入していた場合、被相続人が住民票を置いていた市区町村の窓口で保険証を返却しなければなりません。期限は死後14日以内で、特に必要な書類はなく、被相続人の国民健康保険証を返却して終了となります。
被相続人が勤務先の健康保険組合に加入している場合は、原則相続人が手続きを行う必要はありません。事業主が資格喪失手続きを行うことになっているためですが、場合によっては何らかの指示が来ることも考えられます。対応できるよう準備をしておいてください。
介護保険の資格喪失届の提出
年金や健康保険証と同じく、介護保険の資格喪失届も14日以内に提出しなければなりません。資格喪失届に必要な書類は、被保険者の住民票のある自治体の窓口付近に置かれているため、それを記入して提出するようにしてください。
なお、介護保険は満40歳以上に適用される社会保障制度です。ただし、資格喪失届の提出は全員行わなければならないため、必ず届け出るようにしてください。
世帯主変更届の提出
被相続人が世帯主であった場合、死後14日以内に世帯主の変更をする必要があります。届出は各市区町村の窓口で可能で、15歳以上であれば世帯主として認められます。原則同一世帯の人物が好ましいものの、代理人という形での世帯主変更も可能です。
必要な書類は世帯主変更届で、窓口で受け取ることができます。事前に誰を新しい世帯主にするか、あるいは代理人にするかを決めておきましょう。
遺言書の確認および相続人、相続財産の確定
相続手続きにおいて最も重要なことが、遺言書の確認です。被相続人が生前に遺言書を作成していれば、原則遺言書通りの遺産相続が行われるためです。遺品の中に紛れている場合もあれば、公証役場に保管されているケースもあります。くまなく探してください。
もし遺言書がない場合、相続人を確定しなければなりません。相続人を確定させるためには戸籍謄本を集める必要があり、そこから相続人を割り出します。場合によっては、過去に被相続人が居住していた地域の市区町村役場に問い合わせなければならないケースもあるため、早めに動いておくことをおすすめします。
合わせて実施しておきたいのが相続財産の決定です。現預金や不動産、ゴルフ会員権などの正の遺産のほかにも、借金をはじめとする負の遺産まですべて洗い出さなければなりません。相続財産に漏れがあった場合、のちに行う遺産分割協議がやり直しになってしまうため、入念に相続財産を探すようにしてください。
ここまでの相続手続きでも時間的に難しいという場合は、「相続の窓口」までお問い合わせください。相続に特化した行政書士が葬儀後の手続きをまるっと請け負い、相続人の負担を減らすことができます。詳しくは、以下のページからお問い合わせください。
相続発生から3~4ヶ月以内
相続の発生から3~4ヶ月以内には、具体的な相続方法の決定や相続財産の分割方法を決定しなければなりません。具体的には、次の4つの項目を進めていくことになります。
- 相続放棄・限定承認・単純承認の選択
- 遺産分割協議
- 遺産分割協議書の作成
- 遺産分割協議に伴う各種手続き
これらは民法において手続きの期日が決定されています。ご家庭の状況によって手続きが難しい場合もあるかもしれませんが、早めに決定・手続きしておくことを強くおすすめします。
相続放棄・限定承認・単純承認の選択
相続財産をどの程度相続するかについては、相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きを行うことで選択することができます。具体的には次の3つの方法があります。
内容 | 注意点 | |
相続放棄 | すべての相続財産の相続を放棄するため、相続税の支払いなどが発生しない | 一度相続放棄を選択すると、いかなる理由があっても相続財産を相続できない |
限定承認 | 相続する負の遺産を、正の遺産の範囲内で相続するため相続額がマイナスにならない | 相続人全員の手続きが必要であり、手続きが煩雑 |
単純承認 | プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぐ | マイナスの財産が多いと、借金の弁済などをしなければならなくなる |
単純承認は家庭裁判所への手続きは必要なく、放置していても適用されます。相続放棄と限定承認に関しては、相続を開始した3ヶ月以内に家庭裁判所に必要な書類を揃えて提出する必要があります。
いずれにしても、相続財産を確定させなければ選択できないため、まずは相続財産を洗い出すようにしてください。
遺産分割協議
遺産分割協議は、被相続人の遺言書がなかった場合に行う、相続人全員での話し合いのことです。事前に調査した相続財産をどのように分けるのか、相続の配分とその割合を決定します。対象は相続人とみなされる全員で、全員が合意しなければその分割は成立しません。
遺産分割協議に期限などは設けられてはいませんが、相続税申告が相続の発生後10ヶ月以内と決まっているため、10ヶ月以内に完了させておくのがベストです。なるべく早い段階で完了させておくと、相続税申告が1回で済みます。また、万が一意見が分かれて決裂してしまっても、代理人を立てて新たに話し合いを再スタートできます。
遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書とは、遺産分割協議で決定した相続する財産の目録と割合を記した書面のことです。特定の書式はなく、書き方は自由ですが、相続人全員の署名と実印による押印が必要です。また印鑑証明書も必要となるうえ、相続人全員が1通ずつ所持する必要もあります。
なお、一度作成した遺産分割協議書は、1人の相続人の単独で変更することができません。万が一変更の必要性が生じた場合は、再び相続人全員での協議が必要です。遺産分割協議後に新たな相続財産が見つかった場合も同様です。
遺産分割協議に伴う各種手続き
遺産分割協議書に相続人全員が署名捺印をしたら、次に行うのは解約や名義変更です。現預金や不動産、有価証券などが対象となります。お金関係のものは銀行や証券会社、土地・不動産関連のものは不動産会社や役所に相談すると良いでしょう。
相続人が取引していた金融機関の数が多ければ多いほど、解約や名義変更に時間がかかります。書類不備があるとやり直しになることもあるため、ゆとりを持った手続きが必要です。火災保険やゴルフ会員権などの名義変更も同様です。
なお、不動産の名義変更については、法律が絡む部分があるため後ほど解説します。
準確定申告
準確定申告とは、被相続人の所得税を税務署に申告し納税する制度です。所得税法第125条で規定されており、相続人と包括受遺者が相続発生の翌日から4ヶ月以内にしなければならないと規定されています。
準確定申告は、全員がする必要はありません。以下の条件に被相続人が該当する場合は準確定申告が必須です。
- 事業所得・不動産所得がある
- 2000万円以上の収入がある
- 複数の会社から収入がある
- 公的年金が年400万円以上ある
- 給与・退職金以外で20万円以上の収入がある
- 譲渡所得にかかる納税が発生している
ただし、上記の条件に該当しない場合でも準確定申告をしておくと良いでしょう。医療費控除などの関係で還付金が受けられる可能性があるためです。申告に必要な書類は、国税庁のホームページからダウンロードできます。税務署の窓口でも受け取ることができるため、どちらか都合のいい方を選択しましょう。
相続発生から10ヶ月以内
相続の発生から10ヶ月以内に行うことで最も重要なのは、相続税の申告です。言い換えれば、相続から10ヶ月以内に相続財産の分配が終わっていなければ、相続税の申告ができないということになります。早め早めの準備が必要です。
相続税申告書の作成と相続税の納付
相続税申告は、相続発生の翌日から10ヶ月以内に申告を行わなければならないという決まりがあります。この期間を過ぎてしまうと、延滞税などの加算措置が取られてしまうかもしれません。
申告の際には、まず相続税申告書を作成する必要があります。必要な書式は、国税庁のホームページで公開されているため、そちらをダウンロードするか税務署で受け取るようにしましょう。必要事項を記入し、抜け漏れがないかを確認してから提出してください。
なお、相続税には基礎控除額が設定されていたり、配偶者の税額の軽減措置が用意されていたりします。具体的には次のような内容です。
基礎控除額 | 配偶者の税額軽減措置 | 小規模宅地等の特例 |
基礎控除3000万円に加えて、相続人1人当たり600万円が控除される | 配偶者が相続した財産のうち、法定相続分もしくは1億6000万円のどちらか高い金額までは相続税がかからない | 相続人の土地などのうち、小規模宅地等の特例が適用される場合は、最大80%相続税評価額が軽減される |
万が一、これらの計算を間違っていると、受けられるはずだった軽減措置や優遇措置が受けられなくなってしまいます。自分一人では自信がないという場合は、相続に特化した税理士などに相談してください。
相続発生から1~5年以内
相続に関する手続きは、相続税申告をもって一旦終了となります。しかし、それ以外にも手続きをしなければならないものがあります。具体的には次の通りです。
- 相続登記
- 遺留分侵害請求
- 葬祭費や埋葬料、高額医療費などの請求
- 生命保険の死亡保険金の請求
- 遺族年金や未支給年金の受給申請
いずれも申請期限が長いだけですぐに手続きをしても構いませんが、忘れてしまうと受け取れなかったり罰則を受けたりする可能性があるため注意してください。
相続登記
相続登記とは、個人が所有していた不動産の所有権を被相続人に変更する手続きのことです。これまでは任意でしたが、2024年4月1日以降、相続開始もしくは相続財産に不動産があり、それを相続した日から3年以内の相続登記が義務化されます。
注意したいのが、過去の相続不動産に対しても相続登記の義務が適用される点です。法律の施行日もしくは不動産相続を知ったタイミングのいずれか遅い方から3年以内に申請しなければなりません。違反した場合は、10万円以下の過料となるため、3年以内に相続登記を完了させてください。
遺留分侵害請求
遺留分とは、相続できる財産の最低額を保証した金額のことです。兄弟姉妹以外の相続人に適用され、被相続人との続柄に応じて遺留分が認められると民法で規定されています。
遺留分侵害請求とは、遺言書や生前贈与で遺留分を侵害されている場合に金銭を請求できる権利です。この期限が異常や贈与を知ったタイミングから1年と定められているため、早めの申請が必要です。この時効は、内容証明郵便の送付もしくは調停の申し立てで停止することができます。早めに弁護士に相談しましょう。
葬祭費や埋葬料、高額医療費などの申請
葬祭費や埋葬料、高額医療費の申請は、被相続人の死後2年以内に行わなければなりません。この期限を過ぎてしまうと請求できなくなるため、早めに手続きできるようにしておきましょう。
葬祭費と埋葬料については、被相続人が国民健康保険の加入者の場合と社会保険に加入していた場合で金額が異なります。具体的には以下のとおりです。
国民健康保険 | 3~7万円 |
協会けんぽなどの健康保険 | 一律5万円 |
手続き方法は、被相続人が加入していた保険制度によって異なるため、弁護士や行政書士に相談してみるといいでしょう。
高額医療費については、相続人の医療費がその人の所得の上限額を超えていた場合に請求できるものです。全員が請求できるとは限りませんが、計算しておいて損はないため、算出しておくことをおすすめします。
生命保険の死亡保険金の請求
生命保険の死亡保険金には、保険法によって3年以内に請求しなければ時効が成立するというルールが定められています。請求ができるのは、被相続人の生命保険の受取人になっている人物です。請求方法は加入していた生命保険会社によって異なるため、事前に保険の担当者やカスタマーサポートで確認しておいてください。
遺族年金や未支給年金の受給申請
遺族年金と未支給年金の受給申請は、被相続人の死後5年以内に行わなければなりません。申請できるのは被相続人によって生計を維持されていた遺族です。受給要件を満たしているかどうかは、日本年金機構などに問い合わせれば分かります。確認をして対象であれば、忘れないうちに請求するようにしてください。
相続がはじまったら「相続の窓口」へご相談を
相続がはじまると、葬儀の準備と並行して各種手続きをしなければなりません。あっという間に時間が経過してしまうため、時間に余裕があると思わずに、早め早めに手続きがその準備を進めていきましょう。
もし、故人とは遠方に住んでいて、手続きなどのために帰省しにくい場合は「相続の窓口」にご相談ください。広島・福山・北大阪の相続に特化した行政書士が、葬儀後手続きを代行いたします。時間がなくて手続きに時間がかけれられないという方は、ぜひ最寄りの事務所までご相談ください