遺言

遺言書の効力はどこまである?認められる範囲や無効になるケースを解説

故人が遺言書を残していた場合、民法により遺言書に記載してある内容が相続において優先されると定められています。これだけ聞くと、どのような遺言書でも効力を発揮するように思われますが、実際には効力の及ぶ範囲とそうでない範囲があります。また、せっかく作成した遺言書でも効力が無効になるケースもあるため、作成には注意が必要です。

本記事では、効力が及ぶ範囲と及ばない範囲、遺言書の効力が発揮される期間や書くときの注意点を解説します。これから遺言書を作成しようと考えている人は、ぜひ参考にしてください。

遺言書の効力が及ぶ範囲

遺言書に記載されている全てが効力を発揮するとは限りません。これは民法で規定されており、実際に効力のおよぶ範囲として決められているのは以下のとおりです。

  • 相続人・相続配分の指定および廃除
  • 非嫡出子の認知
  • 遺言執行者の指名
  • 後見人の指名
  • 遺産分割方法の指定
  • 遺産の寄付先
  • 生命保険受取人の変更

それぞれどのような内容なのか、詳しく見てみましょう。

相続人・相続配分の指定および廃除

相続人や相続配分の指定、法定相続人のうち廃除する人物について遺言書に記載がある場合は、遺言書の効力が発揮されます

相続人は、配偶者と民法で定められている第3順位までに該当する人物が相続人として認められています。しかし、遺言書において内縁の配偶者や第三者に相続する旨が記載されている場合は、相続人として認められるのです。同様に法定相続人であっても、相続させない、生前に虐待などを受けていたという主旨の文章が残されていれば、該当の人物が相続人から廃除されます。

また、相続財産の割合についても言及が可能です。相続人以外への遺贈はその最たる例ですし、配偶者や長男など、特定の人物に全財産を相続するなどの記述もこれに該当します。

非嫡出子の認知

非嫡出子とは、婚姻していない相手との間にできた子どものことです。遺言書で非嫡出子がいるということを書いておくことで、その子どもの認知と相続が可能になります。遺言書で子どもの認知を行うのに適しているパターンとして、生前に認知を認めるとトラブルに発展する恐れがある場合が挙げられます。

遺言執行者の指名

遺言執行者とは、被相続人の死後に金融機関の名義変更手続きや不動産の相続登記などを行う人物のことです。遺言書でこの人物を指名することにより、自身の死後の手続きを円滑に進められる場合があります。

また、遺言執行者を指名できる人物を指名することもできます。どちらの方がいいかは、被相続人の家族との関係にもよるため、遺言書作成前に検討しておくと良いでしょう。

後見人の指名

被相続人が死亡することによって未成年の子どもだけが残されてしまうような場合、その子どもの後見人を指名することができます。後見人は子どもに代わって遺産分割協議や死後の手続きを行えます。

遺産分割方法の指定

遺言書には、遺産分割の方法についての指定や禁止を明記することができます。具体的には相続財産の配分や、土地・不動産の相続方法について具体的な指示を出すことが可能です。また、本来相続人にはならない第三者に対して相続することができます。

遺産分割の禁止については、相続開始から5年以内であればこれを禁ずることができます。この方法を使って冷却期間を置き、落ち着いた後で相続させるという手法で使われることもあるようです。

遺産の寄付先

相続人がいない、もしくは相続人には相続財産を相続させたくない場合、死後の財産を慈善団体や法人に寄付することができます。寄付先については遺言書に記載しておく必要がありますが、何らかの事情で相続財産を相続人に渡したくない場合などに有効な方法です。

生命保険金受取人の変更

遺言書に記載しておくことにより、生命保険金の受取人を変更することができます。通常、生命保険の受取人の変更は、保険会社に申請をして契約変更の手続きをしなければなりません。しかし、遺言書に記載がある場合は例外です。もし本来決めていた生命保険金受取人を変更したい場合は、遺言書にその旨を記載しておきましょう。

遺言書の効力が及ばない範囲

遺言書に記載があっても、効力を発揮しない項目があります。具体的には次の3つです。

  • 養子縁組や結婚・離婚に関する内容
  • 遺留分を侵害する内容
  • 事業承継方法などの希望
  • 臓器提供などの遺体処理方法の希望

なぜこれらは遺言書に記載があっても効力を発揮しないのか、詳しく解説します。

養子縁組や結婚・離婚に関する内容

遺言書に養子縁組や結婚、離婚について記載しても効力は発生しません。遺言書では、非嫡出子の認知以外の身分のことを記載しても無効になると規程されています。特定の人物に相続させる、あるいは相続人から除外する場合は、養子縁組や婚姻関係に言及するのではなく、人物名を出して相続の手続き上どうするのかを明記しておきましょう。

遺留分を侵害する内容

遺留分とは、遺言者の相続人が最低限受け取れる遺産のことです。これは民法によって侵害することができないものと記されており、仮に遺言書に「全財産を○○に譲る」と記載されていても最低限の財産は相続人に相続されます。つまり、全財産を特定の誰かに相続させるということは、法律上不可能なのです。

事業継承方法などの希望

被相続人が会社経営者であった場合、自身の思いとして事業承継の方法を記載するかもしれません。一見すると有効そうに見えますが、遺言書内に書かれた事業承継方法はあくまでも故人の希望とみなされ、公的な効力が発生しないのです。事業承継に関して思うところがある場合、生前からその旨を伝えておかなければならないのです。

臓器提供などの遺体処理方法の希望

付言事項と呼ばれる追伸のような内容に、臓器提供の意思表示や遺体の処理方法について記載する人がいますが、こちらも無効です。事業承継方法と同じく、あくまでも故人の希望というレベルで処理されるため、法的拘束力は発生しません。

遺言書が効力を発揮する期間

遺言書が効力を発揮するのは、遺言書を作成した人物がなくなった時からです。作成した人物を遺言者と呼びますが、その人物が死亡するまでは遺言書は効力を発揮しません。そのため、遺言者が死亡しない限り、相続予定の財産に手を出すことは誰もできないのです。

また、遺言書の有効期限は設けられておらず、何年前のものであっても有効とされます。遺言者が死亡するまでの間に何度でも書き換えや新規作成ができるため、最初から完成された内容で書かなくても問題はないでしょう。ただし、一度作った遺言書の見直しなどは定期的に行ってください

効力を発揮する遺言書を書くために必要な要素

遺言書には法律が定めている厳格な様式があり、要件を満たしていない遺言書は無効と判断されてしまいます。その多くが自分自身で作成する自筆証書遺言と呼ばれるもので、公証役場が作成する公正証書遺言よりもミスが多いという特徴があります。

それでも自筆証書遺言を作成する際は、以下のポイントに気をつけましょう。

  • 相続人が全文を自筆で書く
  • 遺言書を書いた日付を記入する
  • 自筆での署名と捺印をする
  • ルールに沿った訂正や加筆が行われている
  • 書面で作成している

それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。

相続人が全文を自筆で書く

自筆証書遺言の場合、遺言書すべてを遺言者が自筆しなければなりません。要するに手書きでなければ、遺言書として効力を発揮しないということです。

パソコンや外出という代筆もありますが、この方法で作成すると遺言書として効力を発揮しないと判断されてしまいます。例外として、財産目録のみパソコンで作成することが認められています。

遺言書を書いた日付を記入する

遺言書を書いた日付が記入されていなければ、その遺言書は無効として扱われます。遺言書全体の内容と同じく日付も自筆でなければならないというルールがあります。日付の記載漏れは、相続人に大きな迷惑をかけてしまうことになるため、忘れずに記載しましょう。

自筆での署名と捺印をする

遺言書は、署名と捺印が必要です。署名は当然自筆でなければならず、パソコンでの記入やゴム印での代用はできません。ただし、印鑑に関しては認印でも問題ないとされています。印鑑に関して特にルールはありませんが、押印していなければ遺言書として効力を発揮しない点に注意してください。

ルールに沿った訂正や加筆が行われている

遺言書の厳格なルールのひとつが、訂正や加筆にも細かな決まりが設けられている点です。例えば、訂正の際には訂正箇所に二重線を引き、その近くに押印をする必要があります。さらに、余白部分にはどこをどう直したのかを書き記した上で、署名をしなければなりません。加筆の際も同様に、吹き出しなどで文章を書き出し、予約部分に書き出した内容を記して署名する必要があるのです。

訂正や加筆が少なければ問題ありませんが、ルールが非常に複雑であるため、自信がなければイチから書き直した方がいいでしょう。

書面で作成している

遺言書は必ず書面で作成しなければならないというルールがあり、録音や録画などの方法で遺言を残すことはできません。文章で書くのが億劫という意見もあるかもしれませんが、法律で定められていることです。遺言書は必ず書面で作成しましょう。

遺言書に関するよくある質問

複数の遺言書が出てきた場合に効力を発揮するものはどれ?

内容に相違がなければどちらも有効な遺言書として判断されます。内容が異なる遺言書が見つかった場合、遺言書内に記載されている日付が新しい方が有効とみなされます。

遺言書の内容に異議があり従えない場合はどうしたらいい?

遺留分の主張をしましょう。民法によって相続人全員に保証されている権利であるため、これをもとに金銭の請求ができます。また、相続人全員の同意があれば、遺言書を無視して相続割合を別で決定することも可能です。

認知症が認められる状態での遺言書に効力はある?

認知症の程度によって異なりますが、意思能力ありと認められる場合は有効となります。とはいえ、認知症を患った状態で作成された遺言書についてはトラブルの火種になることも珍しくありません。この場合は自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言での作成をおすすめします。ただし、公正証書遺言であっても必ずしも有効と判断されるわけではありません。

遺言書作成にお困りなら「遺言の窓口」へご相談を

遺言書には効力を発揮する範囲とそうでない範囲があります。また、遺言書の作成自体に非常に厳格なルールが定められているため、ひとりでは作成できない人もいるでしょう。代筆なども認められていないため、遺言書作成をあきらめてしまう人もいるかもしれません。
そんな時には「遺言の窓口」までご相談ください。相続の経験豊富な行政書士が、公正証書遺言書作成を全面的にサポートします。遺言書の作成をしたいが何を書けばいいかわからない、書式や様式がわからず死後のトラブルが不安という方は、ぜひ一度お問い合わせいただくことをおすすめします。