遺言書は、自身の財産を残す方法を意思表明する文書です。自筆証書遺言の場合、ルールに則り、正確に書く必要があります。しかし、多くの人は遺言書を書く経験などほとんどありません。そのため、遺言書の正しい作成方法がわからない人も多いでしょう。
本記事では、ケース別の遺言書の例文を紹介し、具体的な書き方についてお伝えします。遺言書を作成する際、自身のケースに当てはまる例文を、参考にしてください。
【ケース別】11種類の遺言書の例文
ここではケース別の遺言の例文を紹介します。ご自身の置かれている状況と似ているものがあれば、参考にしましょう。
ただし、以下で紹介するのはあくまでも例文です。状況によって遺言書の内容は変わる点を理解したうえで、参考程度にするようにしてください。実際に作成する際は、行政書士や弁護士など、専門家に依頼することをおすすめします。
1.土地と建物(不動産)を相続させる遺言書の書き方
土地と建物を妻に相続させたい場合の例文を紹介します。
該当する不動産の場所や大きさ、構造などを細かく記載する必要があります。相続する建物の登記情報などを参考に、詳細に記載してください。
2.子どもに全財産を相続させる遺言書の書き方
子どもに全財産を相続させる遺言書の例文は、次のとおりです。
当然ですが、相続する全財産の情報を記載しなければなりません。抜け・漏れがないように、しっかりとチェックしてください。
3.兄弟姉妹に相続させない遺言書の書き方
兄弟姉妹に相続させない場合、遺言書の書き方は以下のとおりです。
兄弟姉妹に遺留分はないため、「すべて妻に相続する」と記載しておけば、兄弟姉妹へ財産が渡ることはありません。
4.愛人の子どもを認知する遺言書の書き方
愛人の子どもを認知する遺言書では、遺言執行人を指定しておきましょう。こうすることで、兄弟姉妹全員の署名捺印や印鑑証明書等が不要になります。
5.長男の嫁に相続させる遺言書の書き方
本来、長男の嫁には相続できる権利がありません。そのため、遺言書では、相続ではなく「遺贈」として譲る形となります。
6.子どもに事業を継がせる遺言書の書き方
子どもに事業を継がせる場合、遺言書において以下のように記載しなければなりません。
継承する事業所の住所を、しっかりと記載しておきましょう。
7.相続する財産に差をつける遺言書の書き方
相続する財産に差をつける場合、次のような書き方が一般的です。
相続財産に差をつける場合、遺言書での記載も重要ですが、事前に専門家に相談しておくことも重要です。場合によっては遺族間で大きなトラブルに発展する恐れもあるためです。十分注意しましょう。
8.内縁の妻に遺贈する遺言書の書き方
内縁の妻に遺贈する遺言書の例文を紹介します。遺留分を超える遺贈は、相続人から遺留分減殺請求される可能性があるため、内容には注意が必要です。
9.施設へ寄贈する遺言書の書き方
施設へ寄贈する場合、その意志を遺言状に書き残しておく必要があります。
受取先となる施設の代表者名などは必要ありませんが、遺贈先の名前を間違えないようにしてください。
10.生命保険の受取人を変更する遺言書の書き方
生命保険の受取人を変更する場合、以下の書き方に従って遺言書をしたためましょう。
本来、生命保険の受取人を変更するには、生前に然るべき手続きを踏まなければなりません。しかし、法律において遺言書での受取人変更もできます。どちらを採用するか、しっかりと検討しましょう。
11.相続人を廃除する遺言書の書き方
相続人を廃除する遺言書の例文を紹介します。廃除できるのは、被相続人に対する虐待や重大な侮辱がある場合や推定相続人にその他の著しい非行があったときと、民法で定められています。廃除するに値する理由を添えるのがポイントです。
遺言書の種類
遺言書の種類は以下の3つです。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
それぞれのメリット・デメリットや、作成上の注意点について紹介します。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が自分自身で手書きする形式の遺言書です。遺言者が自筆で記入し、押印する必要があります。紹介する3種類の中では、もっとも手軽に作成できる遺言書でもあります。
自筆証書遺言の注意点
自筆証書遺言は、パソコンやワープロなどを使用した場合は無効です。全文において日付、氏名を自筆で記入し、押印を忘れないようにしましょう。また、修正がある場合は、所定のルールに従って訂正した箇所を明示する必要があります。
保管場所は原則自宅であるため、遺言書は安全な場所に保管し、信頼できる人だけにその存在を知らせておくと良いでしょう。捨てられたり、紛失したりしてしまうと、遺言書の効力が発揮されません。自宅での保管が不安な場合は、法務局での保管も可能です。
自筆証書遺言は自由に書けるものの、ルールを守る必要があるため、自分で作成するのは難しいでしょう。そのような場合には、行政書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
自筆証書遺言のメリット・デメリット
自筆証書遺言の大きなメリットは、作成が手軽なことです。自身で書くため費用がかからず、弁護士や公証人を通す必要がないため、手続きが簡単です。また、他人に見られることなく、遺言書を作成できます。そのため、家族や他の第三者に内容を知られる心配がありません。加えて、書く内容や形式にはある程度の自由があり、遺言者の意向を反映しやすい遺言書でもあります。
反対にデメリットは、すべて手書きしなければならないことです。そのほかにもさまざまな法的要件を満たしていないと無効になる可能性があるため、作成時には細心の注意が必要です。特に、日付や氏名の記載漏れ、押印忘れなどが無効になりやすい原因となります。また、遺言者の死後には、家庭裁判所での検認が必要です。そのため、手続きには時間と労力を要し、相続人にとって負担となることがあります。
なお、法務局に預ける「自筆証書遺言書保管制度」を利用すれば、検認は不要です。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証役場で公証人が作成する遺言書の形式です。遺言者が公証人の前で遺言内容を口述し、公証人は文書にして作成します。遺言者と証人が署名・押印することで成立します。
公正証書遺言の注意点
公正証書遺言を作成する際には、2名以上の証人が必要です。推定相続人(相続人になることが予想される人)は証人になれないため、第三者へ依頼しなければなりません。証人は弁護士や司法書士に依頼するケースが多いですが、適正な人が見つからなければ、公証役場からの紹介も受けられます。
法的効力の高い公正証書遺言ですが、遺言者が判断能力を欠いていたり証人が不適格であったりした場合は、その部分が無効になる可能性があります。
よって、公正証書遺言を作成しても、必ず希望した内容で相続が行われるわけではない点を理解しておきましょう。
公正証書遺言のメリット・デメリット
公正証書遺言のメリットは、公証人が作成するため、法的要件を満たした遺言を作れる点です。形式不備で、遺言書が無効になるリスクはありません。自筆する必要がなく、自身で書く手間も省けます。また、原本は公証人役場で保管されるため、紛失や改ざんされるリスクもありません。より確実に遺言書の効力を発揮できるだけではなく、遺言書の存在そのものも保障されます。加えて、公正証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが不要です。そのため、遺言者の死後、速やかに遺言手続きを進められます。
デメリットとして、公証人手数料や証人謝礼などが発生するため、自筆証書遺言と比べると費用がかかる点があります。また、公証人や証人に遺言内容を話さなくてはなりません。開封するまで内容を知られたくない場合は、自筆証書遺言か秘密証書遺言を選択する必要があります。
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、遺言書の内容を明らかにせず、公正役場で遺言書の有効性を証明してもらう遺言方法のことです。近年、遺言では自筆証書遺言と公正証書遺言が一般的となり、秘密証書遺言を選ぶ人は少なくなりました。
秘密証書遺言の注意点
秘密証書遺言の本文は、手書きでなくても構いませんが、署名と捺印する必要があります。封印する押印には、遺言書本体に押した印鑑と同じものを使いましょう。異なる印鑑を使うと、無効となるので注意が必要です。
なお、公証人が遺言書の内容を確認することはないため、たとえ不備があっても気づけません。そのため、作成後に法的効力があるかどうかを、専門家に確認してもらうことが望ましいでしょう。
秘密証書遺言のメリット・デメリット
秘密遺書遺言のメリットは、内容を誰にも知られず作成できることです。遺言者自身で封をするため、秘密にしたまま手続きを進められます。公証人や証人に内容を見せる必要がなく、個人のプライバシーを守れます。また、自由度が高く、代筆やワープロ・パソコンでの作成が可能です。
デメリットは、有効性の保証がないことです。自分で作成した場合、法的要件を満たさず無効となる可能性があります。また、遺言書保管制度は利用できないため、紛失や隠匿のリスクがあります。家庭裁判所での検認も必要です。
なお、秘密証書遺言を作成する場合、手数料は1万1,000円かかります。
自筆証書遺言の書き方にお困りの際は「遺言の窓口」へご相談ください
遺言書の作成には法律で定められたルールがあります。自筆証書遺言や秘密証書遺言を選択する場合、記載に不備があると遺言の内容が無効となる可能性があります。正確な遺言書を作成したい方は、「遺言の窓口」までご相談ください。
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