相続問題が自分の身に降りかかった場合、専門家へ相談することが解決への近道です。相続にはさまざまなルールが定められており、個々で対処するのは難しいケースもあります。相続について相談できる窓口は複数ありますが、専門家にはそれぞれ得意分野があります。ご自身の悩みにあわせて、適切な相談窓口を選ぶことが重要です。
本記事では、相続について相談できる窓口や相談先の選び方、専門家へ依頼した際の費用目安について解説します。相続問題でお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
相続相談はどこに行けばいい?相談窓口一覧
相続について相談できる場所は、大きくわけて8か所あります。ここでは各相談先の対応可能業務や、手続きを依頼した場合の費用目安について紹介しています。それぞれの特徴をふまえて、適切な相談先を選びましょう。
相談先 | 主な特徴 |
行政書士 | 行政手続きを幅広く扱う |
司法書士 | 不動産の名義変更が可能 |
弁護士 | 相続人同士のトラブルに対応 |
税理士 | 相続税に関する相談が可能 |
法テラス | 経済的に余裕がない人も相談できる |
銀行 | 金融資産の手続き・運用相談 |
税務署 | 相続税の申告書の書き方、納税手続きの相談が可能 |
市役所や区役所の無料相談 | 相続全般の相談が気軽にできる(依頼はできない) |
なお、紹介している費用はあくまでも目安であり、それぞれの事務所や状況によって金額は異なります。詳細は依頼先にご確認ください。
1.行政書士
行政書士は、官公署に提出する申請書類の作成・提出手続き代理などを行う法律の専門家です。
行政書士の対応可能業務
相続において、行政書士は主に以下のような業務が行えます。
- 遺言書の作成アドバイス
- 戸籍謄本等の収集
- 官公庁への書類提出
- 遺言内容の執行・遺言執行者の就任
- 相続人調査
- 相続財産の調査
- 相続関係図の作成
- 遺産目録作成
- 遺言執行者への就任
- 遺産分割協議書の作成
- 銀行等預貯金の相続手続き
- 相続した自動車の名義変更
- 相続した株式の名義変更
- 相続関係図の作成
このように、行政書士は行政全般にわたる手続き代理を、総合的に扱います。相続人同士のトラブルや、不動産の相続がない場合の相談先として適しています。
行政書士の費用目安
行政書士に相続手続きを依頼した際の、費用目安は以下のとおりです。
項目 | 費用 |
遺産分割協議書作成 | 5万円〜 |
相続人調査 | 2万5,000円〜 |
相続関係説明図作成 | 2万円〜 |
財産目録作成 | 2万円〜 |
預貯金・有価証券の解約 | 3万円〜 |
自動車の名義変更 | 2万円〜 |
なお、一つの業務だけでなく、複数の業務をパッケージとして費用を提示している事務所も多くあります。
2.司法書士
司法書士は、登記申請や供託手続きなどを中心とした、法律に関する幅広い業務を請け負う専門家です。「街の身近な法律家」として、さまざまな問題解決に携わっています。
司法書士の対応可能業務
相続において、司法書士が行える主な業務は、以下のとおりです。
- 遺言書検認の申立て
- 不動産の相続登記
- 相続人調査
- 相続財産の調査
- 遺言書の作成
- 遺言の執行
- 預貯金の解約
- 遺言書の検認申立書の作成
- 遺産分割協議書の作成
- 相続した株式の名義変更
- 相続放棄の申立て
司法書士の業務は主に書類作成が中心で、相続に不動産が含まれる場合の相談先として適しています。一方で、相続人同士でトラブルがある場合には、司法書士への相談は向いていません。
司法書士の費用目安
相続登記を司法書士に依頼した場合、次の3つの費用がかかります。
- 司法書士の報酬
- 登録免許税
- 書類取得にかかる手数料
個々の費用目安は以下のとおりです。
内容 | 費用 |
司法書士報酬 | 5万円〜 |
登録免許税 | 固定資産税評価額×0.4% |
書類取得費用 | 200〜750円程度 |
遺産分割協議書作成費 | 5万円〜 |
相続人調査 | 2万円〜 |
作業内容の範囲によって、トータル費用は大きく変わります。
3.弁護士
弁護士は士業の中でも、裁判や調停において依頼人の代理人となれる、唯一の業種です。
弁護士の対応可能業務
相続では、以下のような業務に対応できます。
- 遺産分割調停・遺産分割審判の代理
- 遺言書の作成
- 遺言書検認の申し立て
- 相続人調査
- 相続財産の調査
- 遺産分割協議書の作成
- 相続放棄の申し立て
- 預貯金の解約、払い戻し
- 有価証券などの名義変更
相続人同士での話し合いが円滑に進まない場合は、弁護士が調停や裁判での代理人となることで、解決につながるケースもあります。調停や裁判において、当事者を代理できるのは、弁護士のみの専門性と言えます。
弁護士の費用目安
弁護士の費用は「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」をもとに報酬基準を設定しているところが多いようです。
具体的な費用の内訳は、以下のとおりです。
遺言執行(基本) | 経済的な利益の額が300万円以下の場合 | 30万円 |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 2%+24万円 | |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 1%+54万円 | |
3億円を超える場合 | 0.5%+204万円 | |
遺言書作成 | 定型 | 10万円から20万円の範囲内の額 |
遺言書作成(非定型) | 経済的な利益の額が300万円以下の場合 | 20万円 |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 1%+17万円 | |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 0.3%+38万円 | |
3億円を超える場合 | 0.1%+98 万円 |
4.税理士
税理士とは税務に関する専門家です。相続においては主に納税や節税対策、税制改正に関するアドバイスが行えます。
税理士の対応可能業務
具体的には、以下の内容の相談が可能です。
- 相続税の節税対策
- 相続人調査・相続財産調査
- 預貯金の解約
- 準確定申告
- 遺産分割協議書作成(相続税の申告が必要な場合)
- 有価証券などの名義変更
- 相続税申告代行
- 税務調査への対応
相続税の計算に慣れない人が行うと、過払いが発生する可能性もありますが、税理士から的確な助言を受ければ、節税できることもあります。相続税のお悩みがある場合は、税理士への相談がおすすめです。
税理士の費用目安
税理士の費用は、依頼内容や状況によって大きく異なりますが、2002年まで適用されていた「旧税理士報酬規定」を参考にしている事務所も少なくありません。
相続税の税務代理報酬の目安は以下のとおりです。ここに基本報酬額10万円が加わります。
相続財産の金額の範囲 | 費用 |
5,000万円未満 | 20万円 |
7,000万円未満 | 35万円 |
1億円未満 | 60万円 |
3億円未満 | 85万円 |
なお、共同相続人が1人増すごとに、加算報酬(費用の10%)が加わります。また、事務が著しく複雑な場合は「費用+加算報酬」の最大100%が加算されることもあります。
参照:経理コンパス
5.法テラス
法テラスとは、法的なトラブルを解決するために、国が設立した総合相談窓口のことです。「誰に相談したら良いかわからない」「解決方法がわからない」といった悩みを抱える方に対し、適切な解決策を提案してくれる機関です。
「民事法律扶助」という制度を利用することで、経済的に余裕のない方が、弁護士や司法書士に無料で法律相談を受けられるようになります。さらに、弁護士・司法書士の費用の立替えを受けられる場合もあります。
ただし、無料相談や費用立替えを受けるためには、収入や資産額が一定の基準以下であるなど、所定の条件を満たす必要があります。具体的な要件については、法テラスのサイトをご覧ください。
6.銀行
銀行では、預貯金や借入金の残高確認、金融資産の名義変更など、相続に伴う実務的な手続きについて相談に応じてくれます。主な業務内容は以下のとおりです。
- 被相続人の金融資産の手続き
- 相続した遺産の運用相談
- 士業への橋渡し
- 相続に関するアドバイス
ただし、銀行では遺言書作成や遺産分割の調停など、法的な手続きは行えません。相談できる内容は限定的ですが、金融資産に関する的確なアドバイスを受けられます。
7.税務署
税務署では、相続税の申告方法や書類の作成方法、申告の必要性などの相談ができます。税務署に相談する方法は、電話と直接足を運ぶ2種類があります。税務署を訪問する場合は、予約をしておきましょう。
なお国税庁のホームページでは、相続税の申告要否判定や申告する際のチェックシートなどが用意されているので、事前に確認しておくと良いでしょう。
注意点としては、節税対策の相談は受けられないことです。特定の納税者にのみアドバイスしてしまうと、公平性が損なわれてしまうからです。法律から外れた助言はできませんが、相続税の一般的なしくみについての相談はできます。
8.市役所や区役所の無料相談
市役所や区役所の無料相談では、行政書士や弁護士などの、法律の専門家に相談できます。なかには、オンラインでの相談に対応している自治体もあります。
注意点としては、相談担当者に問題の解決の依頼や個別具体的な相談はできないことです。また、具体的な仕事を依頼することもできません。あらかじめ話したい内容をまとめておき、資料があれば持参するとスムーズな相談が可能です。
また、「おくやみ」窓口を開設している自治体も増えています。亡くなった方に関する手続きを、1つの窓口で行えるように設置されたものです。課をまたぐことなく、相談できる便利なしくみとなっています。
相続の相談先選びのポイント
相続の相談先を選ぶ際は、専門性や実績、評価や報酬などをふまえて、トータル的に検討する必要があります。相続にはさまざまな事情があるため、自分のケースに合った相談先を見つけることが大切です。ここでは選び方のポイントについて紹介します。
悩みの内容によって相談先を決める
相続の悩みは、百人百様です。各専門家にとって、得意とすることや、対応できる業務はそれぞれ異なります。そのため、抱えている悩みの内容にあわせて、相談先を決める必要があります。
例えば、相続人同士のトラブルについて知りたいのに、税理士へ相談しても必要な回答は得られません。争いが起きた際に法的な対応ができるのは、弁護士のみだからです。
このように、悩みの内容によって、相談先を使い分けることが重要です。いくつかの悩みがある場合は、一つの相談先にこだわらず、複数の専門家へ相談するのも良いでしょう。
相談したい内容の経験と実績があるかを確認する
相談したい内容について、十分な経験と実績があるかを確認しましょう。相続は個別のケースによって事情が大きく異なります。そのため、経験が浅い相談先に依頼すると、適切なアドバイスが受けられない可能性があり、大きな損失を被るリスクがあるのです。
経験や実績が豊富であれば、さまざまな事例に対処できる可能性が高くなります。ホームページで実績を公開している事務所もあるので、事前に確認しておくと良いでしょう。
相続に詳しい担当者を選ぶ
相続の相談をする際は、相続関係に詳しい担当者を選ぶことが重要です。相続の知識や経験が豊富な担当者は、状況に応じた的確なアドバイスができるからです。一般的な法律の専門家でも、分野が異なれば、適切な助言ができない可能性があります。そのため、相続に特化した、豊富な経験と実績を持つ担当者を選ぶ必要があるのです。
相続に詳しい担当者を見つけるには、ホームページに掲載された過去の実績や口コミを参考にするとよいでしょう。
相続相談に必要な準備
相続の相談をする際は、相続財産の情報と相談したい内容を、事前にまとめておく必要があります。準備不足の場合は、的確なアドバイスが得られない可能性があるからです。ここでは、相談する際に準備しておきたい内容を、詳しく紹介します。
相続財産の情報をそろえておく
相談する際には、相続財産の情報を事前にまとめておきましょう。用意しておきたい具体的な資料や書類は、以下のとおりです。
- 預貯金通帳の残高証明書
- 株式や投資信託等の有価証券
- 戸籍謄本
- 固定資産評価額がわかる証明書
- 住民票の除票
- 生命保険証・損害保険証
- 借入金の残高証明書
- 年金手帳
- その他相続財産に関する書類
手ぶらでも相談はできますが、効率よく話を進めるためにも、わかる範囲での情報をまとめておくのがおすすめです。もしも資料の準備が間に合わない場合は、相談先に状況を説明し、アドバイスを受けると良いでしょう。
相談内容をまとめておく
スムーズに相談を進めるためにも、話しておきたい内容をまとめておきましょう。事前に質問を整理しておくことで、確認もれや重要な内容の聞き逃しを防げます。また、相談相手の専門家も状況を正確に把握できるため、的確なアドバイスが可能です。あいまいな質問を投げかけても、必要な回答が得られません。
相続は金銭的・精神的にデリケートな問題を含んでいます。家族間での誤解やトラブルを防ぐためにも、事前の準備が不可欠です。しっかりと相談内容と情報をまとめておきましょう。
行政書士へ相続の相談をするなら相続の窓口へ!
相続に関する相談内容は、多岐にわたります。抱える悩みや予算にあわせて、適切な相談先を選びましょう。また、スムーズな相談をおこなうためには、事前にしっかりと準備することをおすすめします。
もし行政書士へ相談したいとお考えであれば、「相続の窓口」までお問い合わせください。ご相談だけなら無料ですので、何から手をつけたら良いかわからない人でも、気軽にご利用いただけます。また、他の士業との連携体制も整っておりますので、総合的なサポートが可能です。時間や手間がかかる相続の手続きをスムーズに済ませたい方は、ぜひご相談ください。